研究課題/領域番号 |
17591797
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山中 昇 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10136963)
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研究分担者 |
藤原 啓次 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (80326371)
田村 真司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10244724)
保富 宗城 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90336892)
山内 一真 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (80336891)
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キーワード | 治療ガイドライン / 薬剤耐性遺伝子 / 中耳炎 / 母胎免疫 |
研究概要 |
1)治療ガイドラインにもとついた治療による耐性遺伝子変異に及ぼす影響の検討 治療ガイドラインにもとついた治療選択を行った和歌山地区の急性中耳炎症例と治療ガイドラインを採用していない全国各施設より分離された肺炎球菌およびインフルエンザ菌について、pbp遺伝子変異の頻度を検索し比較検討した。 (1)肺炎球菌:3遺伝子変異の頻度は両サーベイランスにおいても42%と同一であったが、1a+X変異株は和歌山地区サーベイランスにおいて極めて少ないことが判明した。その結果、遺伝子変異が認められない株は全国:7%、和歌山:21%と和歌山において著明に多い成績が得られた。 (2)インフルエンザ菌:lowBLNAR株は両サーベイランスで約35%と相違なかったが、全国サーベイランスではhighBLNAR株が35%、和歌山にて5.6%と著明に少ない成績が得られた。その結果、遺伝子変異を認めない株は全国:31%、和歌山:57%と和歌山において有意に多い成績が得られた。 以上より、治療ガイドラインに基づいた治療により起炎菌の薬剤耐性遺伝子変異を抑制することが可能であると考えられた。 2)経鼻的母胎免疫の新生児インフルエンザ菌感染予防の検討 急性中耳炎の重要な起炎菌であるインフルエンザ菌の菌株共通外膜蛋白抗原の一つであるP6蛋白に注目し、マウスモデルを用い母胎免疫による新生児へのインフルエンザ菌特異的免疫応答の誘導について検討し、以下の成績が得られた。P6蛋白を用いた経鼻的母胎免疫により、母マウス血清中および母乳中にP6特異的IgG、IgA、IgM抗体が誘導された。また、P6蛋白を経鼻免疫した母由来の仔マウスでは、出生時より血清中P6特異的IgG抗体が認められ、母より経胎盤的に特異抗体が移行したと考えられた。一方、非免疫母由来の仔マウスでは、出産直後には、血清中P6特異的IgG抗体は認められないが、P6蛋白により免疫された母マウスの母乳栄養を受けた場合には、血清中P6特異的抗体が経時的に上昇する。しかし、P6免疫母マウス由来の仔マウスが非免疫母の母乳栄養を受けた場合には、経時的にその抗体価は減少した。これらのことから、P6特異的抗体は、母乳-腸管経路により移行し、新生児期において血清中P6特異的IgG抗体価を維持するうえで重要な役割をしていると考える。
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