【背景】 臨床的にG-CSF産生腫瘍は局所再発および遠隔転移を高率に生じ予後が非常に悪い。G-CSF産生癌細胞は癌が存在する微小環境において癌細胞の浸潤能および転移能を向上させる機序が存在する。癌細胞自身ならびに癌細胞周囲間質細胞の中で特に血管内皮細胞の生物学的活性に対するG-CSFおよびIL-6の影響を下記のごとく検討した。 【G-CSF産生癌細胞の生物学活性】 ●高濃度G-CSF産生頭頸部癌細胞株はIL-6も高濃度に産生する。癌組織中と血清中に認められるIL-6およびG-CSF濃度は相関した。癌細胞にIL-6レセプターの発現を認めた。 ●高濃度IL-6および高濃度G-CSF産生頭頸部癌細胞株はinvasion chamberを用いてのinvasion assayにおいて高い浸潤能を示した。IL-6濃度依存性に細胞増殖は抑制されたが浸潤能は亢進した。 【G-CSFおよびIL-6によるマウス血管内皮細胞の生物学的活性の変化】 ●マウス血管内皮細胞にG-CSFおよびIL-6レセプターが存在するかを現在検討中である。 ●G-CSFおよびIL-6投与によりマウス血管内皮細胞の増殖には何ら影響を及ぼさなかった。 ●G-CSFによりマウス血管内皮細胞の浸潤能の変化を認めなかった。しかしIL-6によりマウス血管内皮細胞の浸潤能は亢進した。 【VEGFによるマウス血管内皮細胞の生物学的活性の変化】 ●高濃度VEGF産生のマウス血管内皮細胞はヌードマウス皮下に腫瘤形成能をもつ。 ●高濃度VEGF産生のマウス血管内皮細胞は他のマウス血管内皮細胞と比較し増殖速度が速い。 ●高濃度VEGF産生のマウス血管内皮細胞は他のマウス血管内皮細胞と比較し浸潤能が向上している。 【抗癌薬の血管内皮細胞に対する影響】 ●Fibrin Gelを用いて、マウス血管内皮細胞の三次元培養実験系を確立した。 ●bFGFやVEGFを投与するとマウス血管内皮細胞の管腔形成が認められた。 ●抗癌薬を培養液に添加し、マウス血管内皮細胞の管腔形成の状態を検討中である。抗癌薬の癌新生血管に対する抗腫瘍効果を検討している。
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