研究概要 |
HUV-EC-C(ヒト由来血管内皮細胞)とMS1 VEGF(マウス由来血管内皮細胞)を使用した。MS1VEGFはMS1(マウス由来血管内皮細胞)に遺伝子導入をおこないVEGF産生を亢進させたマウス血管内皮細胞である。 VEGF,G-CSF,IL-6の血管内皮細部増殖能への影響 HUV-EC-CおよびMSlVEGFを7日間通常培養し下記の結果を得た。 ・VEGFを産生するMSlVEGFはHUV-EC-Cより高い増殖能を認めた。 ・炎症性サイトカインG-CSFおよびIL-6を血管内皮細胞培養上清中に添加しても、いずれの血管内皮細胞の増殖に変化認めなかった。 血管内皮細胞の3次元培養システムの確立 この培養環境では生体内のように血管形成をえることが可能である。 1:ラブテックIIチャンバースライドを使用、2:フィブリノーゲン液200μLを注入、3:トロンビン液133μL重層、4:37℃、湿度100%,、0分、5:HUV-EC-CまたはMSlVEGF細胞を5×104 cells/mLに調整、6:細胞浮遊液1mL重層、7:フィブリノーゲン液200μL重層、8:トロンビン液133μL重層、9:37℃、湿度100%、5分、10培養液37℃、湿度100%、7日間培養。 血管内腔形成能 HUV-EC-CおよびMSlVEGFを下記の3次元培養環境をもちいて3日間培養し下記の結果を得た ・HUV-EC-Cは血管内腔形成を認めたが、VEGFを産生するMS1VEGFは血管内腔形成を認めず増殖するのみであった。 ・血管新生薬としてbasic fibroblast growth factor(bFGF 50μg/ml)、endothelial cell growth supplement(PMA50μg/ml)で刺激をした血管内皮細胞を72時間培養し、血管形成の状態を検討した。HUV-EC-Cでは血管内腔形成の亢進を認めたが,MSlVEGFでは血管新生薬で刺激しても全く血管内腔の形成を認めなかった。 まとめ VEGFは血管形成に深く関与している。今回の結果ではVEGFは血管内皮細胞の増殖に関与し亢進をさせた。しかしVEGFを過剰に発現する血管内皮細胞の増殖能は高いが、bFGF、PMAで刺激をしても血管内腔形成を認めなかった。VEGFの過剰産生は血管内皮細胞の増殖を促進するが、血管腔形成などの成熟には関与せず、場合により抑制している可能性がある。VEGF産生が認められる癌組織中の未熟な腫瘍血管の構築の原因となっているものと推察された。
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