研究概要 |
SDS液中で細分化した牛内耳粗抗原溶液1.6gをWhole Gel Eluter装置にて一定の分子量ごとに分離して、分子量の異なる30分画の内耳蛋白を採取した。Eluter装置の蛋白回収率は50%であり、これまでの内耳粗抗原での感作実験結果によると7〜8回分の感作が可能な量を採取した。従って、各分画内耳蛋白液を7等分し、1等分はプロテオーム解析に使用し、残りの6等分の内耳抗原蛋白は、マウス感作に使用した。今回の研究では30分画した内耳蛋白から分画3、4,5,6,7,8,9,11,12,16,17,18,20,21,22について検索した。各抗原の感作にはC57BL/6マウスを2匹ずつ用意し、2週毎に3度全身皮下注射した。最終感作後1週目に採血し、全身麻酔科にPLP固定液での心潅流固定にて側頭骨を採取した。血清の内耳抗体の検索は牛内耳粗抗原を対象としたwestern blot法にて検索した。その結果、分画5、6、7,8の内耳抗原で感作した動物血清には明瞭な陽性ブロットを66kDa付近に認めた。また33、70kDa付近にも淡い陽性ブロットを認めた。 しかし、分画3、4、9、11、12、16、17、18、20、21、22で感作した動物血清や正常マウス血清においては66kDa付近の陽性ブロットは発現しなかったが、同様の淡い陽性ブロットが33、70kDa付近に発現することから、この内耳蛋白33、70kDaに対応する抗体は内耳非特異的と推察された。これらの結果、分画5,6,7,8には66kDa付近の内耳特異的抗原を含むことが推察される。18年度の研究においては残りの分画内耳蛋白1,2、10、13,14,15、19、23、24、25、26、27,28,29、30について検索する予定である。内耳蛋白Cochlinに対する抗体を用いて前庭組織のCOCH由来蛋白の局在を免疫検索組織化学的に検索した結果、平衡斑の間質や半規管膨大部に大量に認めた。内耳の炎症細胞発症機序の研究では異物蛋白の内耳へ再刺激時に内耳全域でのIFγが発現、次いでICAM-1が発現されて、その発現内耳部位へのリンパ球を含む炎症細胞浸潤を誘導することが明らかになった。
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