研究概要 |
Protean II xi 2-D-cell電気泳動装置とWhole Gel Eluter電気泳動装置を用いて内耳膜様部粗抗原蛋白を分子量別に30分画した。各分画蛋白を実験動物に2週毎に計3回全身皮下感作し、各動物血清中の内耳自己抗体産生の有無をwestern blot法にて検索した。その結果、分画30分画中19分画にブロット発現を認め、その発現程度は3通りで著明、中等度、軽微にわかれた。陽性バンドの標的内耳抗原分子サイズは約14kDa、17kDa、42kDa、46kDa、55kDa、60kDa、64kDaの7種類であった。そこでこれらバンドの抗体産生を誘導した内耳抗原蛋白分画番号3、5、8、10、11、18、22、24のプロテオーム解析を行った。その結果、分画番号3はCOCH蛋白、分画番号5はCOCH蛋白とglucose regulated protein、分画番号8はCoagulation factor C homolog, Cochlinとβactin、分画番号10,11はCOCH蛋白、分画番号18はcrystallinαB,分画番号22はhypothetical protein LOC614958, histone 2B, homeostatic thymus hormone α、分画番号24はhistone H4をそれぞれヒットした。この結果、分画3、10,11は高純度のCOCH遺伝子由来蛋白を含有することが明らかになった。分画3から11まではCOCH蛋白を含有している。が分画3,10,11はCOCH遺伝子由来蛋白のみで他の蛋白の混入は認めなかった。この結果、内耳粗抗原からの内耳特異的抗原の抽出率は4.4%と極めて少ないが、分画3から分画11まではCOCH遺伝子を含有する蛋白が11%を占めるため、このなかのCOCH以外の蛋白を抗体吸着法などにてさらに多量のCOCH遺伝子由来蛋白の分離回収が可能となろう。内耳自己免疫の発症にはT細胞性免疫が重要な役割を果たすことは我々は1999年代に報告したが、さらに内耳自己抗体が発症後の病態変化に重要な役割をはたしていると推察される臨床的証拠もあり、今後このモデルで内耳自己抗体の推移と病態との変化を詳細に検討していく予定である。
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