研究概要 |
実験1:線維芽細胞を、上気道(健常な副鼻腔粘膜、炎症性産物である鼻茸)と下気道(健常肺、線維化肺)より単離した。実験に使用するまで凍結保存した。実験は、上気道の線維芽細胞と下気道の線維芽細胞細胞を同時にTGF-β1にて24時間刺激と、72時間刺激を行った、刺激後線維芽細胞を凍結保存した。線維芽細胞は第3継代から第10継代を用いた。その後、RNeasy kitを用いRNAを抽出・精製した。精製したRNAをRNAポリメラーゼを用いて試験管内増幅した。また比較する2種類の組み合わせのRNAを各々Cy-3およびCy-5蛍光色素をラベルとしてcDNA合成反応により標識プローブを作製した。さらに、蛍光標識した2種類のcDNAプローブを同時、競合的に2万5千種のヒト遺伝子がスポットされたマイクロアレイ・スライドとハイブリダイゼーションさせた。現在数理統計的解析を行うところであり、統計的結果は出ていない。しかし、蛍光色素による遺伝子のスポットは、上気道の線維芽細胞と下気道の線維芽細胞で違いが見られ、上気道と下気道の線維芽細胞には、かなりの性質の違いがあると予想される。これら気道線維芽細胞のheterogeneityは気道慢性疾患病態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。 実験2:線維芽細胞を培養し、TGF-β1で刺激した。刺激後1時間でPLP固定し、免疫組織学的にSmad2,3,4の局在を調べると、下気道線維芽細胞は、刺激前に細胞質に局在していたSmad2,3,4はすべて刺激後核に移行していた。一方、上気道の線維芽細胞は、刺激後Smad3のみ核に移行し、Smad2,4の刺激による核への移行はみられなかった。Smad分子の移行にも上気道と下気道の線維芽細胞にheterogeneityが存在することがわかった。
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