研究概要 |
上気道の慢性炎症性疾患(たとえば慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など)においては、線維化病変はみられにくい。一方好酸球の浸潤はきたしやすい。この病態が線維芽細胞の特殊性から、ある程度説明できないかを探究することが、目的であった。鼻線維芽細胞は、線維化に誘導する上で最も重要な因子であるTGF-βで刺激しても筋線維芽細胞に変換されないことがわかった。今回のマイクロアレイの解析から、その理由は、Rho(Ras homology)mRNAの上昇がみられず、肺線維芽細胞ではその上昇が確認された。またTGF-βで刺激すると肺線維芽細胞では、Smad2,3,4が細胞質から核に移動したが、鼻線維芽細胞では、Smad3のみが移動した。鼻線維芽細胞において、このSmad分子の移動の違いも筋線維芽細胞への変換されない理由の一つである可能性が示唆された。 また鼻線維芽細胞は、LPSに直接反応し種々のサイトカイン・ケモカインを産生するが、肺線維芽細胞は反応しない。さらに鼻線維芽細胞はTLR2,3,4,5のリガンドに反応しRANTESを産生することがわかった。TLR2,3,4,5イガンドとIL-4で線維芽細胞を刺激すると、MCP-4,TARCが相乗的に産生されることがわかった。これら相乗的産生には、NF-κBとSTAT6が深く関与していることが、これまでのマイクロアレイの解析から示唆されている。 これまでの解析から鼻線維芽細胞は自然免疫に深く関与していること、線維化病変は形成されにくい可能性があることが分り、またそれに関与する細胞内分子の解明がすすんだ。
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