研究概要 |
音が存在している場合、第1次聴皮質における神経活動は発火数が増加し、発火の同期性が充進することが明らかになっているため、同様の変化が耳鳴患者においても起こっていることが推測される。 実際に耳鳴を起こすことで知られているサリチル酸、キニンをネコに投与したところ、発火数は増加しなかったが、同期性は亢進していた。しかしこの検討はシングルユニットのtotalの数が少なく特徴周波数別に検討することは困難であった。ラットを用いた実験ではサリチル酸、キニンによる耳鳴は9〜10kHz周辺と報告されており、特徴周波数別の検討が不可欠と考えられる。 以前はネコで行ったが、我々が行った聴覚の末梢(蝸牛)の検討はほとんどモルモットで行っており、比較するため今回はモルモットを用いた。モルモットの皮質からの報告は少ないが、最近NottinghamのWallace教授から助言を受け、我々の施設でも記録可能となっている。Brain Wareを用い16本の電極から最大128のシングルユニット記録が可能であり、特徴周波数別の検討を行い耳鳴のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 まずControlとして無処置のモルモットの聴皮質に4極電極を4本,脳表からおよそ0.4〜1.2mm刺入、記録を行い、正常のmap、発火数、発火様式について検討し平成18年の日本耳鼻咽喉科学会においてモルモットの聴皮質の周波数分布がWallace教授が報告しているように若干ネコとは異なっていることを報告した。 このモルモットの聴皮質の周波数分布に基づき9〜10kHzと考えられる領域を中心に電極を挿入し、記録を行った。キニン投与後、10kHz周辺の周波数領域においてネコで行った実験結果と同様に発火数の変化は認めなかったが、同期性の亢進を認めた。以上より聴皮質における同期性の亢進が耳鳴と関連していると考えられた。
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