研究概要 |
頭頸部扁平上皮癌症例を対象とした。 正常扁平上皮では、シクロキシゲナーゼ(COX)-1の発現は見られるが、COX-2の発現は全く認められなかった。扁平上皮癌細胞質にCOX-1,COX-2の発現が見られたが、COX-2により強い発現が認められた。COX-1,COX-2共に間質に浸潤した炎症細胞や、線維芽細胞にも発現が見られた。COX-2では、間質に近い癌細胞で強い発現があった。高分化扁平上皮癌と低分化扁平上皮癌を比較したとき、低分化扁平上皮癌で癌細胞におけるCOX-2陽性細胞の割合が少なかった。しかしCOX-1の発現については差がなかった。COX代謝の下流に位置するmPGES(プロスタグランジンE合成酵素)も癌細胞細胞質に強い発現が認められた。PGESの発現は、高分化扁平上皮癌の細胞質の方が、低分化癌よりも亢進していた。低分化癌も高分化癌も間質の線維芽細胞や、炎症細胞でも発現が見られた。COX-2とmPGESの癌細胞における細胞内発現分布は類似しており、いずれも核周囲の細胞質に強い発現が認められた。蛍光抗体法により、COX2とmPGESの局在を検討したところ、いくつかの癌細胞で、COX2とmPGESが一致した。さらに、細胞質内の核膜近傍に集積が見られた。UICCのT分類、N分類に従い検討したが、COX-2、mPGESともに有意な差を認めなかった。高分化扁平上皮癌16例、低分化扁平上皮癌16例について検討したところ、mPGESは高分化扁平上皮癌では有意に高い値を示した。一方、COX-2は有意な差を認めなかった。PGE2の4種類の受容体すべてにおいて、癌細胞に発現がみられた。EP2,EP3,EP4については、間質に浸潤した炎症細胞や、線維芽細胞、血管内皮細胞にも癌細胞と同程度の発現がみられた。EP3とEP4は、癌細胞での局在も類似していた。EP1については、癌細胞での発現が、間質に浸潤した炎症細胞よりも弱かった。
|