研究概要 |
頭頸部がん治療の一環として、喉頭がんだけでなく下咽頭がんや中咽頭がんなどの原発巣手術に伴って摘出した喉頭を対象に、引き続き喉頭前庭部、仮声帯、声門下部の粘膜上皮を観察し、喉頭粘膜の扁平上皮仮生の程度と広がりを計測した。また喉頭全摘を行った頭頸部がん患者の治療前の情報(喫煙歴、放射線治療歴など)を記録し、扁平上皮化生との関連を検討した。摘出喉頭はさらにホルマリン固定・脱灰後、喉頭〜下咽頭の全割連続段階切片法によるHematoxylin-Eosin染色標本を作成した。特に、喉頭の局所免疫防御機構の中心的役割を果たす喉頭腺の分布を、粘膜腺上皮と粘膜内腺組織を中心に検索し、その変化画像解析装置を用いて詳細に検索した。加齢と共にこれらの腺組織が如何に変化していくかを、形態・機能の面から計測し、まず漿液腺や粘液腺の分布様式の変化を記録した。 その結果、成人喉頭における声門下部での喉頭腺の密度は、過去に検討し報告した小児喉頭の声門下部の喉頭腺密度とほぼ同比率であった。また、成人喉頭声門下部の喉頭腺密度は全年齢層でほぼ一定であったが、声門上部は高齢者ほど腺密度が減少し、粘液腺の比率が増加する傾向にあった。すなわち、声門上部は加齢の影響を受けやすく、喉頭腺の変化も声門下部よりも大きい可能性が示唆された。 喉頭がん症例については、がん浸潤とがん関連因子(PCNA, p21など)の発現分布と喉頭がん進展との関連を解析した。p21とT stageとは逆の相関、PCNA陽性率とT stageには正の相関が存在した。声門がんと声門上がんとではPCNAやp21の発現状況が異なっており、とくに声門上がんの増殖能に重要な関連があることが判明した。
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