研究概要 |
本研究開始以来採取してきた,代表的な頭頸部がんである喉頭がん,下咽頭がん,中咽頭がん等の合併摘出喉頭を対象に,喉頭粘膜とくに声門上部での扁平上皮化生の発現を,画像解析装置を用いて計測した6その結果,成人喉頭声門上部のもっとも外界の影響を受けにくい喉頭室粘膜上皮にも扁平上皮化生が発現する変化を観察した。これらの扁平上皮化生移行部を対象に,上皮性因子(Kr-7,Secretory Component),増殖因子(PCNA,Ki-67)等の発現を免疫組織学的に検討した。腺上皮では同様にSCやKr-7の染色性が強く示されたが,移行部を境に扁平上皮化生部分は染色されず,粘膜上皮の性状の変化が明らかになった。細胞の増殖活性を示すとされるPCNA(またはKi-67)の発現は,均一な腺上皮では基底部にみられるのみであった。一方,上皮化生様の変化をきたした喉頭室粘膜では,Kr-7に反応するのは部分的で,肥厚した上皮部分ほどPCNA陽性細胞が発現していた。この傾向は上皮化生がより鮮明にみられる領域ほど強く,上皮化生がほぼ完成した部分では基底部の細胞増殖が盛んで,severe dysplasiaからcarcinoma in situに近似する変化を示す部分では特に顕著であった。 声門上がんではがん関連遺伝子(p21^<WAF1/Cip1>)や増殖因子の発現と再発やリンパ節転移発現との関連を中心に解析した。声門上がんではT因子とp21^<WAF1/CiP1>発現率の間に逆相関がみられ,生存率は陽性群の方が高い傾向にあった。がん関連遺伝子の中で,Tumor-associated Macrophages(TAMs)の浸潤に関連するとして注目されるCap-43遺伝子の発現についても検討した結果,病理組織分化度や遠隔転移の発現との間に有意の相関があることが判明した。
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