研究課題
基盤研究(C)
早期発見が困難でリンパ節転移が多く、声門がんに比較して予後不良な声門上がんの細胞生物学的特性と宿主反応に基づく浸潤様式と臨床経過を検討した。とくに喉頭室に主病変を置き、加齢による粘膜上皮の変化や喉頭腺の変化を観察した。腺組織の構成は高齢者ほど声門下部よりも声門上部の方の実質腺組織率が低下し、粘液腺の比率が高い傾向をみとめた。成人では喉頭前庭部や仮声帯の大半は扁平上皮化生した粘膜で覆われていた。一方喉頭室では線毛上皮が優位であったが、喫煙者の喉頭室の一部に扁平上皮化生が観察された。喉頭室粘膜の免疫組織学的観察では分泌因子(SC)、サイトケラチン7(Kr-7)は扁平上皮とは反応せず、腺上皮や喉頭腺細胞質に観察された。PCNA、Ki-67は扁平上皮がんに観察された。一方、線毛上皮は残存するものの細胞の配列が乱れ、一部が上皮化生様の変化をきたした喉頭室粘膜では、SCやKr-7に反応するのは部分的で、肥厚した粘膜の基底部にはPCNA陽性細胞が発現していた。この傾向は上皮化生が鮮明な領域ほど強く、上皮化生がほぼ完成した部分や、severe dysplasiaからcarcinoma in situに近似する変化を示す粘膜では特に顕著であった。すなわち、声門上部の扁平上皮化生部では、増殖活性を持つ細胞が基底部に発現し、異形上皮の出現・がん化へ繋がる可能性が示唆された。喉頭がん浸潤に伴って発現するTリンパ球に周囲の樹状細胞の分布を検討した。未熟なDCであるLangerhans細胞は正常リンパ節および転移リンパ節内のリンパ濾胞周囲に密に分布し、リンパ節転移のない患者のリンパ節内の分布数が、リンパ節転移陽性患者よりも有意に多かった。生存群のリンパ節内樹状細胞は死亡群に比較して有意に多く、リンパ節転移陽性群でも、樹状細胞数平均値は生存群の方が多かった。樹状細胞の分布は喉頭がんおよび下咽頭がん患者の予後に影響を与える因子であることを示している。
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