研究概要 |
網膜色素変性に代表される遺伝性網膜変性疾患は、遺伝的異質性に富む疾患である。原因遺伝子は他種類に及び現在まで報告されている原因遺伝子をスクリーニングしてもその一部が解明されているにすぎない。そこで本研究では現在までに報告されている遺伝性網膜変性疾患に着目し、遺伝子変異の頻度と臨床像を検討した。 Leber先天盲72症例中、眼科的検索を試行した51家系54名を対象とし、初発症状、屈折、視力、眼底所見、他合併症を調査し、Haneinらの報告に従い、以下の様に遺伝子変異と表現型を分類した。A群(GUCY2D):羞明、+7以上の遠視、視力は光覚弁〜指数弁、黄斑部を含む網膜変性、B群(AIPL1, RPGRIP1):羞明、+7以下の遠視、視力は指数弁〜0.05、黄斑部を含む網膜変性、C群(RPE65, TULP1):夜盲、周辺部から始まる網膜変性、視力は0.1〜0.3、D群(CRX, CRB1):夜盲、遠視、黄斑部異常、中心暗点、視力は0.1〜0.2視力とし、変異を認めなかった症例をE群とした。LCA3家系6例に遺伝子変異を確認し、表現型はHaneinらの報告に一致していた。またE群は表現型に多様性が認められ、日本人LCAに主要な原因遺伝子が存在していることが示唆された。RDH12、AIPL1、RPE65で確認された変異はすべて新規変異であり日本人Leber先天盲の原因遺伝子となることを証明した。さらに、網膜分離症、クリスタリン網膜症、Stargardt病、コロイデレミア、小口病は本研究ではほぼ100%に原因遺伝子変異を確認したため遺伝子解析が眼科学の分野でも重要な役割を果たしてくることが示された。 また網膜色素変性の遺伝疫学研究を行うために患者からアンケート形式で、喫煙、日光暴露、生活習慣、さらにストレス度を測定するためにPOMSを用いた。POMSでは、網膜色素変性の患者は全ての年齢層で活力がおちておりまたうつ傾向があることが示された。ストレスと網膜色素変性の進行度の関連は不明であるがPOMSを用いた研究によりより繊細な内面的ケアが必要であると考えられた。
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