研究概要 |
前年度の研究において未分化骨髄間質細胞(BMSC)移植緑内障眼では非移植緑内障眼に比較して、より多くの網膜神経節細胞(RGC)が認められることが明らかとなった。BMSCのtrophic effectによりRGCの細胞死が抑制された可能性を検討する為に、移植後2、4週の緑内障眼の凍結切片に免疫染色を施行し、BMSCでの発現が報告されている成長因子、およびRGCの生存に重要であると考えられる成長因子(bFGF,CNTF,GDNF,BDNF,SDF-1,HGFα)の発現を解析した。その結果、移植後2週のBMSCにおいてCNTF,GDNFの発現が認められ、移植後4週のBMSCにおいてbFGF,BDNF、HGFα、SDF-1の発現が認められた。次に移植眼の硝子体、網膜を単離し、real time PCR法により前述の成長因子の発現について定量的解析をおこなった。その結果、移植後2、4週におけるbFGF,CNTFの発現がBMSC移植緑内障眼においてPBS注入緑内障眼に比較し有意に増加していることが明らかとなった。両成長因子は共に緑内障眼において発現が減少しており、その2者の発現が、BMSC移植により特異的に増加することはBMSCが緑内障による欠落因子を補う形でRGC保護に関与している可能性を示唆する。BMSCによる神経保護効果が示唆される一方、BMSCの神経細胞、およびグリアへの分化が認められなかったことより、次に神経細胞への分化を誘導したBMSCを緑内障眼に移植した。未分化なBMSC移植眼に比較し、神経誘導BMSC移植眼では多くの移植細胞が網膜表面に生着していたが、生着部位は未分化細胞同様、網膜表面から内層に限局しており、視神経乳頭への生着は認められなかった。また神経、グリア特異マーカーのうちneurofilamentの発現は認められたが、RGC特異マーカーの発現は認められなかった。
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