昨年に引き続き、粘膜透過性ナノ粒子を用いて、点眼での眼内移行性を向上させる実験を施行した。ナノ粒子としてキトサンを表面に修飾したリピッドエマルージョンを用いた。キトサン非修飾リピッドエマルージョンをコントロールとした。移行性評価のため、粒子中にシクロスポリンを封入しウサギに点眼した。点眼後1時間で眼球を摘出し、結膜・角膜・強膜・虹彩・水晶体・前房・硝子体・網膜を分離して採取し、各部分におけるシクロスポリン濃度を測定した。この実験を3回線り返し、その平均を算出した。その結果、キトサン修飾粒子点眼では、シクロスポリンが結膜>角膜>前部強膜>前部網脈絡膜>後部強膜>後部網脈絡膜の順で測定できた。一方、キトサンを修飾していないリピッドエマルージョンでも同様の傾向を認めたが、後部網脈絡膜への移行性は明らかにキトサン修飾粒子のほうが優れていた。以上より、キトサン修飾リピッドエマルージョン粒子を点眼に応用することで後眼部疾患の治療にも応用できる可能性が示された。 病巣部位特異的Drug Delivery System(DDs)の研究では、以前の研究で使用したシアリルルイスX修飾リポソームを使用した。コントロールとして、シアリルルイスX非修飾リポソームを使用した。リポソームにデキサメサゾンを内包させ実験的マウスぶどう膜炎モデル(EAU)に投与し、眼および各臓器(肝臓、腎臓、脾臓、血液)におけるデキサメサゾン濃度を測定し、リポソームの分布および薬剤送達効率を検討した。同時に透過型電子顕微鏡を用いて、炎症部位に確かにリポソームが集積しているか否かについても検討した。結果は、シアリルルイスX修飾リポソームでは、炎症眼に極めて高い集積を示したが、非修飾リポソームでは測定限界以下であった。電顕でもリポソームの集積が確認でき、この粒子が炎症眼に対する極めて効率の良いDDSになりうることを示した。
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