アレルギー性結膜疾患では結膜における炎症反応と角膜上皮障害が関連することが知られている。また培養細胞の研究により、角膜線維芽細胞はケモカインや接着分子を発現するアレルギー反応の増悪因子であり、角膜上皮細胞は涙液中の生理活性物質と角膜線維芽細胞を隔離するアレルギー反応の抑制因子と推察されている。本研究では角膜上皮を剥離し角膜実質を露出することのアレルギー反応への影響を検討した。 Brown Norwayラットをブタクサ花粉とalumにて感作した。感作21日目に右眼の角膜上皮を機械的に剥離し、両眼にブタクサ花粉を点眼して実験的アレルギー性結膜炎を作成した。アレルギー反応の即時相、遅発相は抗原点眼後20分、24時間で観察した。接着分子(ICAM-1、VCAM-1)、ケモカイン(TARC、IP-10、eotaxin、RANTES、MCP-1)のmRNA量および炎症反応の組織学的な評価を抗原点眼後24時間で行った。 抗原点眼を行った動物においてブタクサ花粉による感作と角膜上皮剥離は遅発相の臨床スコアを相乗的に増強したが(P<0.05、2元配置分散分析)、即時相には相乗的な作用はみられなかった。角膜上皮剥離は感作・抗原点眼を行った動物の結膜における好酸球浸潤を増加し、ICAM-1、TARC、RANTES、MCP-1のmRNA量を増加させた。 以上の結果より角膜上皮剥離は好酸球浸潤を増加させラット実験的アレルギー性結膜炎の遅発相を増強すると考えられた。
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