アレルギー性結膜疾患では結膜における炎症反応と角膜上皮障害が関連することが知られている。また培養細胞の研究により、角膜線維芽細胞はケモカインや接着分子を発現するアレルギー反応の増悪因子であり、角膜上皮細胞は涙液中の生理活性物質と角膜線維芽細胞を隔離するアレルギー反応の抑制因子と推察されている。本研究では角膜上皮を剥離し角膜実質を露出することのアレルギー反応への影響を検討した。研究項目は、1)角膜上皮剥離のアレルギー炎症に与える影響、2)角膜上皮剥離による角膜、結膜からのサイトカイン、ケモカイン、接着分子の発現、3)アレルギー性炎症を惹起することの角膜上皮創傷治癒への影響、であった。 結果 1)抗原点眼を行った動物においてブタクサ花粉による感作と角膜上皮剥離は遅発相の臨床スコアを相乗的に増強したが、即時相には相乗的な作用はみられなかった。角膜上皮剥離は感作・抗原点眼を行った動物の結膜における好酸球浸潤を増加させた。 2)角膜上皮剥離は結膜におけるICAM-1、TARC、RANTES、MCP-1の産生・発現を、角膜におけるTARC、RANTES、IP-10、MCP-1、ICAM-1、VCAM-1の産生・発現をそれぞれ亢進させた。 3)結膜にアレルギー性炎症を惹起することにより、角膜上皮の創傷治癒は遅延した。 考察 以上の結果より、実験的アレルギー性結膜炎モデルにおいて角膜上皮はアレルギー反応の抑制作用を持っており、角膜上皮を剥離することにより結膜炎が増悪するが、これには角膜内の細胞の活性化が関与している。また、アレルギー性炎症により角膜上皮の創傷治癒は遅延しており、アレルギー炎症により角膜上皮のバリア機能が障害されることが炎症反応自体をさらに増悪化させるという悪循環に陥っていると考えられる。
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