研究概要 |
1)黄斑下手術により採取をした脈絡膜新生血管膜に対する免疫組織化学的研究 既に酸化型LDL受容体(スカベンジャー受容体)の一つであるLOX-1局在を証明した(Arch.Ophthalmol.122;1873,2004)が、動脈硬化に重要とされる主要なスカベンジャー受容体のクラスA受容体(SR-A)の免疫組織学的検討を行った。新生血管膜内には多数のマクロファージ(KP-1陽性細胞)を認めたが、その一部にSR-A陽性細胞を認めた。加齢黄斑変性症以外の新生血管膜にも同様の所見を認め、新生血管進展に寄与する可能性が示唆された。 2)レーザー誘導脈絡膜新生血管モデルを用いた、LOX-1の脈絡膜新生血管形成に及ぼす影響の検討 野生型(C57BL/6)マウス及びLOX-1遺伝子欠損(LOX-1 KO)マウスの網膜に、一定の条件でレーザー照射し、脈絡膜新生血管誘導モデルを作成した。照射後の後眼部の組織でのLOX-1の発現をreal-time RT-PCRにて検討し、MMP-2及び9の発現をgelatinザイモグラフィーにて検討した。また照射後2週間後の脈絡膜新生血管を形態的に定量化した。野生型ではレーザー照射後24-48時間後にかけてRNAレベルでのLOX-1の誘導を確認した。また照射3-5日後にMMP-2,-9前駆体の発現上昇と活性型MMPを認めるが、LOX-1 KOマウスでは前駆体発現及び活性化が抑制されていた。また照射2週間後の蛍光造影での新生血管検出では、野生型では93%に新生血管を認めたが、LOX-KOでは43%に減少していた。以上よりLOX-1が新生血管の形成過程で主要な役割を果たしている事が示唆されている。 3)眼内容液のプロテオミクスを用いた解析 酸化ストレス前後での眼内含有蛋白質の変動を解析する目的で、先ず正常眼内に含まれる蛋白質の解析を進めている。手術時に採取したヒト前房水を2次元電気泳動にてゲル上に展開し、銀染色にて得られたスポットを質量分析計(MALDI-TOF-TOF)にて蛋白質の同定を行った。網羅的同定を行い、少なくともalubmin,alloalubmin,transferrin,apolipoprotein,vitamin D binding protein,transthretin,antitrypsinが主要タンパク質として同定された。
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