平成17年5月より平成18年9月までの期間において、沖縄県を代表する有人離島の久米島町で緑内障疫学調査を兼ねた眼科検診を行った。40歳以上の全住民を対象とし、最終確定人口は4632人であった。その内、受診者は3762人で受診率は81.2%であった。これは本邦における大規模緑内障疫学調査の多治見スタディの78.1%を超える高受診率であった。これまで報告した結果から1.翼状片有病率は約31%であり、国際的にも極めて高有病率であることが判明した。2.開放隅角緑内障有病率は3.64%(n=137人)であり、その内眼圧が21mmHgを超える原発開放隅角緑内障は0.72%(n=27人)であり、21mmHg以下の正常眼圧緑内障有病率は2.92%(n=110人)であった。3.閉塞隅角緑内障有病率は2.74%(n=103人)であり、4.それ以外の続発緑内障(病型判定不能を含む)有病率は0.72%(n=27人)であった。全緑内障の有病率は7.1%であり、多治見スタディーの5%を上回る高有病率であった。多治見スタディーでは眼圧値が21mmHg以下の正常眼圧緑内障の有病率が3.6%と非常に高頻度であり、国際的にも日本における緑内障の病型の特徴が注目された結果であった。久米島スタディーではこの正常眼圧緑内障の有病率は多治見スタディーにおけるそれより若干低くなっているものの、依然として国際的には非常に高い値であった。さらに閉塞隅角緑内障の有病率を比較した場合、多治見スタディーの0.6%、さらにこれまでに国際的に報告された有病率を大きく上回り、最も閉塞隅角緑内障の有病率が高いことが知られているイヌイットと同程度であった。沖縄県では閉塞隅角緑内障有病率が極めて高く、沖縄県あるいはその離島における失明予防や眼科医療を考える上で極めて重要な調査となった。
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