ラットを用いたTNF-αによる眼内炎症モデルを作成した。ラット眼内に0.01-0.1ngのTNF-αを注入し、その後経時的に生体顕微鏡で観察すると、注入後12-24時間をピークとする炎症性の変化が見られた。炎症の強さをスコア化して評価すると、炎症の強さは注入したTNF-αの容量に依存していた。acridine orange digital fluorography(AODF)を用いた観察では、炎症惹起眼において網膜動静脈の拡張がみられ、注入後24時間での白血球のローリング、網膜内への集積はともに著明に増加していた。 次にヒト網膜血管内皮細胞をシート状に培養し、その上でヒト多核白血球を培養したのちにリンスし、残存した白血球数をmyeloperoxydase(MPO)アッセイにより定量した。この際、培養上清中に0.1-10ng/mlのTNF-αを添加してその影響を調べた。5ng/mlのTNF-αを添加した群ではコントロールに対し、接着する白血球数は約40%増加した。また、この接着白血球数の増加は培養上清に同時に抗ICAM-1抗体を添加することによって10%程度にまで減少した。 同様の実験をTNF-αを添加する代わりに高グルコース刺激、高インスリン刺激で行うと、いずれも網膜血管内皮細胞への白血球の接着は増加した。しかし、高グルコース、高インスリン刺激を行った網膜血管内皮細胞の培養上清中にはTNF-αの増加は見られなかった。
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