研究概要 |
H17年度の研究目的は、動物眼に視神経障害を作成し、全視野刺激ERGおよびmfERGの経時的変化を明らかとすることでる。 10匹のネコの片眼に、経硝子体的に眼内ジアテルミーを用いて、視神経乳頭の全周囲の網膜に熱凝固を加えて神経線維層の障害を作成した。僚眼には、sham surgeryを行いcontrolとした。ジアテルミー後1,2,4,および12週に全視野刺激ERGおよびmfERGを記録した。また、同時期にoptical coherence tomography(OCT)を施行し、視神経乳頭周囲の網膜神経線維層の厚さ(RNFLT)を計測した。12週での実験終了後に安楽死させ、眼球を摘出し網膜組織標本を作製した。 全視野刺激ERGの錐体応答では、aおよびb波振幅の変化は認められなかったが、photopic negative response(PhNR)の振幅が経過に伴って徐々に低下した。一方、mfERGではジアテルミー後1週で波形変化がみられ、P1以降に現れるoscillationが減弱した。この波形変化は1週以降では不変であった。OCTでは視神経乳頭周囲のRNFLTは経過に伴って薄くなり、網膜組織標本でも同様な所見が得られた。眼底後極部のRNFLTは減少し、網膜神経節細胞層の核数が減少していた。 以上の結果から、視神経障害後のERG変化はmfERGでは障害後早期に現れることが明らかとなった。一方、全視野刺激ERGではPhNR振幅は経過に伴って徐々に低下した。このことから、mfERGは網膜神経節細胞あるいはその軸索の障害を早期に検出できる可能性が示唆された。 この結果を踏まえて、緑内障、網膜内層疾患および視神経症などの視神経障害をきたす疾患でERGの有用性を検討する予定である。
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