研究課題
基盤研究(C)
以前、研究代表者らは、眼球の前房内に存在するTGF-β2や、新たな免疫抑制物質と考えられている神経ペプチドの一種であるCGRPを用いてマクロファージを刺激すると、そのマクロファージが免疫制御システムを獲得することを報告した。このシステムを利用して、研究代表者らは失明率の高いヒト難治性ぶどう膜炎のモデルである、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の発症抑制に応用できることを立証した。今回、EAUに対して、より抑制効果の高い治療法と考えられるCGRP遺伝子を導入した樹状細胞による遺伝子治療を施行するにあたり、前段階の実験として網膜抗原IRBP由来のペプチド1-20とCGRPおよびC57BL/6マウスから得られたCD11陽生樹状細胞を一晩共培養し、その樹状細胞をIRBPペプチド免疫マウスに移入したところ、陽性対照群と比較して、CGRP刺激樹状細胞注入群ではEAU発症が抑制されていた。一方、CGRP遺伝子のプローブをPCRの手法を用いて設計し、マウス樹状細胞にElectrophoresis法で導入させたCGRP遺伝子導入樹状細胞からCGRPが産生されることをチェックし、IL-10等の細胞抑制性サイトカインがCGRP遺伝子導入樹状細胞から産出されることの確認を行った。それに引き続きCGRP遺伝子導入細胞をEAU発症マウスに注入し、発症抑制効果を調べたところ、有意にEAUの発症抑制効果が認められた。細胞性免疫能を表す免疫ペプチドに対する遅延型過敏反応も、CGRP遺伝子導入細胞注入群では陽性対照群よりも抑制されており、CGRPによる直接刺激細胞群と同様の結果となった。またCGRP刺激樹状細胞の表面分子は、無刺激樹状細胞に比べてB7-2の発現が抑制されていたが、同様にCGRP遺伝子導入細胞でも細胞表面分子の変化がみられるかどうかについて有意な結果は得られなかったが、全体としてCGRP遺伝子導入細胞はマウスEAUを抑制することができ、今後の難治性ぶどう膜炎治療への新たな足がかりになると思われた。
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