研究課題
基盤研究(C)
眼は、臓器内の炎症を自動制御する「免疫特権:immune privilege」という性質をもつ臓器である。免疫特権は、自己免疫疾患や臓器移植後拒絶反応の自動制御に深く関与している。我々は、眼の免疫特権の分子機構を解析し、眼組織移植後の拒絶反応のあらたな制御法を確立することを最終目標としている。本研究において、移植後の眼内免疫抑制性微少環境の維持に関与すると思われる新しい候補因子として、免疫補助シグナル分子であるProgrammed death-1とそのリガンドB7-H1(PD-L1)に注目し、以下のことを明らかにした。B7-H1は、角膜内皮細胞に恒性発現し、角膜移植後に眼局所に浸潤するPD-1陽性T細胞にアポトーシスを誘導し、角膜内でエフェクター細胞を除去することにより、拒絶反応の効果相(effector phase)における抑制効果を発揮する。一方、PD-1/B7-H1経路は、角膜移植後に眼由来の抗原提示細胞と脾臓のB細胞やナチュラルキラーT細胞により誘導される制御性T細胞に依存する免疫寛容現象には、関与しない。角膜細胞に発現するB7-H1は、抗原特異的な反応性T細胞による障害を抑制するのみでなく、抗原非特異的な活性化T細胞によるbystanderな障害も抑制する。また、炎症性サイトカインであるインターフェロン-γの存在下では、角膜細胞におけるB7-H1の発現はさらに増強して、T細胞のアポトーシスをさらに強く誘導する。T細胞表面のPD-1発現は角膜細胞との接触により増強し、アポトーシスに至りやすくなる。以上のように、角膜移植におけるPD-1/B7-H1経路の役割は、2次リンパ器官における免疫応答というよりも、末梢におけるエフェクター免疫細胞と角膜細胞における細胞相互作用に関与し、局所における免疫抑制性微少環境の維持に貢献する分子であることを明らかにした。
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