研究概要 |
平成18年度は,これまでに以下の結果を得た. 移植後のグラフト機能あるいは生着結果に影響を及ぼすと考えられている虚血再潅流障害における血管新生の意義,関与について,マウス小腸虚血再潅流障害モデルを用いて検討した.C57BL/6マウスを用いて,血管クリップにて上腸間膜動脈を45分間行う.再潅流後経時的にマウスを犠牲死させ,小腸および肺を摘出し,経時的にその評価を行う.Real-time PCR法により,VEGF, nk-1, nt-1の発現を定量した.その結果,小腸局所において,再灌流後早期にVEGFの発現の上昇を認めた.従って,VEGFが虚血再灌流障害を促進するmediatorである事が判明した.各受容体モノクロナール抗体を用いて,その抑制効果について検討した.その結果,nt-1, nk-1の単独の投与では,有意な生存期間の延長は認めなかったものの,両者の併用により,マウスの再灌流後の生存期間は有意に延長した.さらにReal-time PCR法を用いて,検討した結果,障害局所のサイトカインやケモカインの発現の低下を認め,これらの局所の免疫活性の低下が,障害抑制効果の寄与しているものと考えられた. また慢性拒絶モデルとして,B12マウスからC57BL/6マウスへの心移植モデルを用いて検討した結果,VEGFの発現は拒絶反応の進行とともに増強し,血管新生が慢性拒絶反応の進展にも寄与している可能性が示唆された. 以上の結果に基づいて,さらに障害抑制効果の検討を行い,また小腸移植モデルででも,同様に免疫応答抑制効果を確認する事を予定している.
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