【目的】腸管粘膜防御機能の破綻に伴う"Bacterial Translocation(BT)"予防のために消化管粘膜を維持する何らかの対策が必要であると考えられている。今回我々は、腸管細菌叢の恒常性維持に不可欠とされる、空腹時腸管運動MMC(migrating motor complex)へ及ぼす効果をヒトグリセンチンを用いてin vivoで検討した。 【方法】1)Wiustar系ラット(200〜250g)に胃、空腸、回腸に腸管運動検出用のフォトトランスデューサーを装着した後、さらに外頚静脈よりカテーテルを挿入し、10日間通常飼料で飼育後a)グリセンチン(1、5、10、20μg/kg/day)投与群、b)GLP-2(1、5、10、20μg/kg/day)投与群、c)グリセンチン(10μg/kg/day)+GLP-2(10μg/kg/day)投与群、d)1/2濃度の生理食塩水点滴群(コントロール群)の3群にわけ、7時間の絶飲食後に、各増殖因子を投与しつつMMCの測定を行う。2)10日間のTPN施行後に、同様にa)〜d)群に分けMMCを測定する。 【結果】通常飼料で10日間飼育後のラットでは、グリセンチン10μg/kg/day、GLP-2 10μg/kg/day、あるいはその同時投与で同様にMMCの増殖因子投与中の抑制が認められたが、TPN10日間施行後のラットでは、コントロール群においてもMMCの抑制が見られ、増殖因子投与群との有為差は認められなかった。 【考察】今回の実験により、MMCの増殖因子投与中の抑制が認められた。おそらく、この抑制により増殖因子が長期間腸管内に留まり、パラクラインとして腸管内で腸粘膜め増殖、機械的・免疫学的両者バリア機能ゐ増強に作用することに寄与するものと考えられた。(TPN群においても同様であり、アポプトーシスの抑制に寄与すると思われる。)
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