研究課題/領域番号 |
17591870
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
浜田 吉則 関西医科大学, 医学部, 助教授 (00172982)
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研究分担者 |
奥村 忠芳 (奥村 忠義) 関西医科大学, 医学部, 助教授 (80113140)
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キーワード | intestinal adaptation / intestinal endothelical cells / nitric oxide / inducible nitric oxide synthase / statins / HMG-CoAreductaseinhibitor / mevalonate / mRNA3'-untranslated region |
研究概要 |
一酸化窒素(NO)は生体において様々な生理作用を持っている。いろいろな臓器障害時に産生されるNOは、主に誘導型一酸化窒素合成酵素(iNos)を介している。iNosは一時期に特定の臓器で比較的多量のNOを合成し、その障害の進行あるいは回復・保護の両面に関与することが知られている。我々はラットの小腸移植モデルを用いた研究より、上皮成長因子(EGF)が移植腸管におけるグルコース、アミノ酸などの輸送体の発現を増加させ、移植腸管の腸管適応を促進させることを明らかにしてきた。最近、小腸の移植や虚血・再灌流障害モデルにおいてNOが小腸移植後の細菌感染を抑制しグラフトの保護作用を示す報告が散見される。 本年度は小腸細胞(IEC-6)を用いて、そのNO産生活性を小腸移植時のグラフト保護効果の指標として、種々の臓器保護効果を持つ薬剤のスクリーニングを行った。さらに、小腸の虚血・再灌流障害モデル動物を用いて、in vivoでの保護効果を追求した。その結果、前年度にも報告したとおり高コレステロール血症の薬であるstatins(HMG-CoA reductase阻害剤)が強い活性を示した。Pitavastatin(三共)はそれ単独ではiNOS誘導やNO産生には全く影響を与えない。しかし、炎症時(炎症性サイトカインinterleukin-1beta存在下)には強いiNOSmRNAの発現をともない、iNOSタンパク質のレベルを著しく上昇させ、多量のNO産生を促進した。この効果はstatkmsによってその合成が阻害されるメバロン酸やその下流の代謝物(geranylgeranylpyrophosphate)を投与することによりブロックされた。従って、このpitavastatinによるfNOS誘導・NO産生の増加は、明らかにpitavastatinのコレステロール合成阻害効果の一端であると考えられる。生体でのiNOS誘導の制御はNF-kappaBを介したiNOSpromoter活性のみならず、そのmRNAの安定化(post-transcdption制御)が貢献することは良く知られている。我々は後者のmRNAの安定化に、iNOSmRNAの3'-非翻訳領域(3'UTR)のAU-rich elements(AUUU(U)A)とその結合タンパク質に加えてiNOS遺伝子のアンチセンス転写物が関与することを見出した。肝細胞の実験系ではpitavastatinがこのアンチセンス転写物の増加を介して、すなわちmRNAの安定化を介してiNOS誘導とNO産生を促進した。小腸でも同様の機能でpitavastatinがNO産生を促進している可能性が高い。
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