平成17年の目標は、ラット脊椎虚血モデルを確立し、Green fluorescent protein(GFP)を遺伝子導入したラット(グリーンラット)から得た骨髄幹細胞を経動脈的に移植し、運動機能評価をすることである。すてにラット脊椎虚血モデルを確立していたため、ただちに経動脈的移植を行った。移植後の経過を判定するのに約3ヵ月かかるため、現在移植は3回目の結果を待っている段階である。第1回の実験では、グリーンラットを使用したが、2回目以降は、グリーンラットの供給が停止しているため、通常のラットを用いて実験を行った(グリーンラットを供給している日本SLCと米国の企業間でのパテントの問題が生じたため、この1年間一時的に供給が停止している。尚、この問題を解決するために、現在当施設での自家繁殖の手続きを行っていて、組換えDNA実験委員会と動物実験委員会の許可を受けたばかりである。親となるグリーンラットは、岡山大学から分与される予定である)。移植後、下肢の運動機能に改善を認めたラットがいるか、初期の麻痺の程度により改善にばらつきがあるため、現在、統計学的検討を行っている。 組織学的検討では、経静脈的投与に比べ経動脈的投与では明らかにグリーンラット由来の細胞が多いが、移植した細胞が多いと塞栓を生じている箇所があり、移植細胞数の検討を行っている。 脳への骨髄幹細胞の移植実験の報告から、骨髄幹細胞がニューロンの細胞マーカーを発現した細胞へ分化していることは確かであるが、それが機能を獲得しうるか否かは、未だ明らかではない。このため、介在ニューロンに分化するための骨髄幹細胞の培養条件の検討を開始した。基本となる培養条件は、Deng Wらの方法(Biochem Biophys Res Commun 2001)に則して検討している。
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