1.ケロイド由来の線維芽細胞により、真皮モデル(収縮コラーゲンゲル)を作成し、その収縮の経過、硬さ(共振動によるインピーダンス)を測定した。ケロイド由来線維芽細胞による真皮モデルは、正常皮膚由来線維芽細胞によるモデルに比べて収縮過程が早く起こり、またより硬く収縮する性質を示した。またケロイドの治療薬であるトリアムシノロンの培地への添加により、その収縮過程と硬度が抑制されることを認めた(正常皮膚由来線維芽細胞では、硬度は不変)。ケロイド由来の線維芽細胞そのものが、正常皮膚の線維芽細胞と異なる性質を示し、また皮膚モデルで、臨床症状に即した性質を再現できると思われる結果を得た。 2.比較対象として、真皮組織かち線維芽細胞を取り除いた無細胞真皮(アロダーム)を用い、皮膚モデルの作成を試みた。このモデルでは、通常の皮膚モデルと比較して、表皮角化細胞層の重層化が不十分となった。 表皮角化細胞の単層培養による創傷治癒モデルでは、三次元培養による創傷治癒モデルと比較して表皮層の再形成が遅くなる。今後、ケロイド由来線維芽細胞を用いた真皮モデル、正常線維芽細胞による真皮モデルおよび無細胞真皮を用いた創傷治癒モデルを作成し、ケロイド由来線維芽細胞による創傷治癒過程(再上皮化過程)を他のモデルと比較検討する。 3.神経線維腫のカフェオレ斑から採取した線維芽細胞による皮膚モデルで、正常皮膚由来の線維芽細胞による皮膚モデルより著名に色素濃度が上がることを、見出して報告した。皮膚モデルが表皮と真皮の細胞間相互的影響を検討するためのモデルとして有用であることを再確認した。 平成18年度は、ケロイド由来の細胞を用いた創傷治癒モデルの作成、および主としてin situ hybridazation法を用いて、表皮層の再形成過程における遺伝子発現に関する解析を進める。
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