1.平成17年度、耳垂ケロイド由来の線維芽細胞を用いて、収縮の経過、硬さを測定する真皮モデルを作成した。ケロイド由来の線維芽細胞そのものが、真皮モデルで、臨床症状に即した性質を再現できると思われる結果を得た。今年度は、このケロイド由来線維芽細胞真皮モデルで、トリアムシノロンを培地へ添加することにより、収縮過程と硬度が抑制される時期を、詳細に検討した。真皮モデル作成を作成する初期段階で、培地にトリアムシノロンを添加することにより作成したケロイド由来真皮モデルの硬度は、トリアムシノロンを添加しない正常線維芽細胞真皮モデルの硬度と比較し、有意な差を生じなかった。またトリアムシノロンを、ケロイド由来真皮モデル培養5日目以降に添加すると、培養10日目の硬度は、トリアムシノロンを添加しない正常線維芽細胞真皮モデルの硬度と、有意な差を生じなかった。これらより、トリアムシノロンには、コラーゲンゲルが収縮する過程ならびに、収縮したコラーゲンの硬度を抑制する働きがあることを、実験的に見出した。 2.ケロイド由来線維芽細胞真皮モデル、正常皮膚由来線維芽細胞真皮モデルおよび無細胞真皮を用いた創傷治癒モデルを作成し、ケロイド由来線維芽細胞の創傷治癒過程(再上皮化過程)を、他のモデルと比較検討した。ケロイド由来線維芽細胞の創傷治癒モデルで、正常皮膚由来線維芽細胞創傷治癒モデルと同様の、表皮層の再形成が見られた。一般的な免疫染色では、分化マーカーの発現に、大きな差異は認めなかった。一方、無細胞真皮による創傷治癒モデルでは、元となる表皮層の形成が不十分であった。また同様に表皮層の再形成も不十分であったが、特に基底層ならびに基底上層の形成が悪く、角化層への分化が特徴的であった。表皮層の再形成において、線維芽細胞の由来組織による質的な違いより、線維芽細胞の有無による影響が大きいことが示唆された。
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