研究課題/領域番号 |
17591888
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片山 浩 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教授 (90161067)
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研究分担者 |
高橋 徹 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (40252952)
森田 潔 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (40108171)
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キーワード | MODS / 炎症 / インターロイキン-11 / tumor necrosis factor alpha / iNOS / Heme Oxygenase-1 / 酸化ストレス / 肝臓 |
研究概要 |
集中治療医学の発達にも関わらず敗血症性多臓器障害(Multiple Organ Dysfunction Syndrome : MODS)の死亡率は依然として高い。特に肝臓はMODSの標的臓器であるのみならず、炎症反応を増強することにより、MODSの増悪化に大きな役割を果たしている。そこで、我々は、MODSの肝不全に対する新しい細胞保護療法を開発する目的で、四塩化炭素投与によるラット劇症肝炎モデルを作製し、このモデルにin vitroでストレス蛋白heme oxygenase-1 (HO-1)1の誘導能がある抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-11(IL-11)を投与し、肝の傷害・炎症に及ぼす影響を検討した。その結果、IL-11の投与は血清ALT値の低下と肝組織傷害の改善をもたらした。また、炎症性メディエーターであるtumor necrosis factor-alphaとinducible nitric oxide synthaseの遺伝子発現に対してもIL-11はその発現の抑制をもたらした。さらに、これらの炎症性メディエーターの転写促進因子であるnuclear factor kappa-BのDNA結合活性に及ぼす影響を検討したところ、四塩化炭素投与により上昇した活性はIL-11の投与により著明に低下した。炎症反応は細胞に酸化ストレスを惹起し最終的に細胞を傷害する。そこで次に、IL-11が酸化ストレスの指標の一つである細胞のmalondialdehyde(MDA)値に及ぼす影響を検討した。IL-11は四塩化炭素投与により上昇したMDA値を有意に低下させた。一方、これらの保護効果はストレス蛋白HO-1の拮抗阻害薬の投与により消滅した。以上より、IL-11は、ストレス蛋白HO-1の誘導を介して炎症反応を軽減し、細胞に対する酸化ストレスを和らげることにより、肝保護効果を示したと考えられた。IL-11は酸化ストレスから細胞を保護することにより、MODSの肝不全に対する新しい治療薬をなる可能性がある。
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