研究概要 |
マウスの出血性ショックモデルとして、左大腿動脈よりカテーテルを挿入し、ヘパリン投与後脱血して血圧を40mmHgに90分保つ。蘇生方法として、高張食塩液(HS:7.5% NaCl)を4ml/kgと脱血血液で蘇生した場合:HS+SBと2LR+SB(2倍量の脱血血液量のラクテックリンゲル液と脱血血液)とSham群とコントロール群での、小腸での障害とアポトーシス発現との関係を蘇生後2h,6h,24h,48hで観察した。小腸障害は2LR+SB蘇生群の6hの時点で他の群に比較して有意に小腸の絨毛の基底部に最も強く空胞化が出現し、また同時期にHS+SB 6h群は2LR+SB 6h群よりも有意に障害の程度が抑制されていた。一方、アポトーシス発現をTUNEL法で検索すると、アポトーシスの発現は絨毛の上皮よりむしろ基底部に多く出現し、2LR+SB群の2hの時点で最も強く出現していた。同時期のHS+SB 2h群は2LR+SB 2h群よりも有意に抑制されていた。これらを肝臓、脾臓、胸腺で調べると小腸と同様に出血性ショック2h後の時点でアポトーシス発現が見られ、高張食塩液群でアポトーシス発現が抑制されていた。脾臓、胸腺などの免疫関係臓器においても、アポトーシス発現が抑制されていることから、他の報告でもみられている様に、免疫賦活的に作用していることが強く推察されるので、アポトーシスとの関連を検索しているところである。小腸では蛋白修復機能を持つ分子シャペロンのHSP40,HSP70は高張食塩液投与により増強しており、出血性ショック後の臓器障害防御効果に関与している可能性が示唆された。今後、アポトーシス発現及び抑制のメカニズムを解析することにより、出血性ショックなどの後に続発する臓器障害の防御に役立つものと思われる。
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