研究概要 |
(目的)無数の分泌性蛋白質の中から,特定の生命現象に寄与する重要な蛋白分子を同定することは,困難な作業である.しかし近年,二次元電気泳動・質量分析計を用いた蛋白質同定法の精度が増し,特定の生命現象に関わる複数の蛋白分子を網羅的に解析しようとするプロテオーム解析に用いられている.当該研究では期間内に,敗血症患者において二次輌電気泳動・質量分析計を用いた,血清分泌性蛋白質のプロテオーム・プロファイリングを行い,(1)サイトカイン産生能(TNF-α)の異なる患者間あるいは同一患者での異なる時期で比較し,発現の異なる蛋白質群を特定する.(2)発現の異なる蛋白質について,データベース検索と統計学的相対危険度の比較から免疫反応の違いに関与している分子の重要度を特定する.(3)重要度の順位に基づいて分子生物学的に,免疫反応への関与を検証する. (方法)対象:インフォームドコンセントの得られた100例の敗血症患者と,高度侵襲手術として食道癌根治手術前後50例(平成16年度は25例)および健常人50例の全血をLPSで刺激しTNF-α産生能を計測しTNF-α産生能から免疫応答性の背景因子を割り付ける。 血清蛋白質の濃縮:血清15mlを濃縮遠心しproteome解析用蛋白質として保存する. (1)二次元電気泳動 (2)質量分析 (結果)(1)平成18年度はSIRSの患者の血清からサイトカインの濃度を同時測定可能なbeads arrayの解析を行った.(2)また,劇症肝炎患者における解析でもIL-17の高値がみとめられた.(3)未知の物質の同定には二次元電気泳動では血清中のアルブミンに影響を受け,微量の分子の解析が不可能であったため,サイファージェ社製のChip assayについて予備実験をおこない良好な結果を得た. (今後の方向性)(1)敗血症患者,劇症肝炎患者のビーズアレイの結果を論文にまとめる.(2)Chip assayを推進し,未知の侵襲性メディエーターの同定を行う.
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