研究概要 |
本研究で、種々の高糖環境(糖濃度100,200,300,400,500mg/dL)で血管内皮細胞(HUVECs)を継代培養した結果、血管内皮細胞からの好中球遊走因子であるinterleukin(IL)-8の産生を観察すると、短期間(12-24h)の高血糖でも血管内皮細胞からの好中球遊走因子であるIL-8の産生が亢進することを明らかにした。今年度は、血管内皮細胞を外傷早期に損傷組織で増加するTNFで刺激し、IL-8産生変化を観察した。その結果、血管内皮細胞からのIL-8産生は、高糖環境下で有意に増加することが示された。外傷早期の高TNF環境下の高糖環境がIL-8産生増加に関与していることから、損傷組織への好中球浸潤増加の一因となっていると考えられた(Kinoshita K, et.al. : Interleukin-8 production from human umbilical vein endothelial cells during brief hyperglycemia : The effect of tumor necrotic factor alpha. J Surg Res. in press)。 重症外傷患者や意識障害患者では、敗血症合併が転帰を左右する一因であることが知られている。上記結果から、別の実験系で糖濃度の違う環境でそれぞれLPS刺激下、非刺激下に血管内皮細胞(HUVECs)のIL-8産生を測定し、グルコース濃度が細胞レベルの炎症反応に及ぼす影響を検討した。LPS刺激下の高糖環境ではグルコース濃度100mg/dL群に比して12,24時間後でIL-8が有意に高値を示した。高糖環境はHUVECsのIL-8産生を増加させ、この反応はLPS刺激下で促進された。以上より、敗血症患者においても高血糖が合併した場合は炎症反応を助長し、二次性組織障害の一因となる可能性が示唆された。
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