研究概要 |
マウス下顎頭軟骨は胎齢14日で、間葉凝集の状態であり15日で最初の軟骨形成が認められ、16日では肥大細胞層が著しく伸長することがわかっている。本年はまずもってこの下顎頭軟骨初期形成過程における既知の転写因子の発現を検索した。通法にしたがって試料を固定、パラフィン包埋し、冠状断切片を作成してIn situ hybridization法でRunx2,Osterix, Sox9,Sox5等の発現を検索したところ、前3者はいずれも胎齢14日の間葉凝集に発現がみられ、下顎頭軟骨形成に何らかの働きをしていることが判明した。胎齢15日で最初の軟骨形成が認められると軟骨内では、Osterixの発現が著しく低下していること、またRunx2の発現も若干減少していることがわかり、一方Sox9の発現は引き続き軟骨内で認められるほか、Sox5の発現が新たに軟骨内に認められた。このことはマウス下顎頭軟骨の初期形成部位においてはOsterixが軟骨形成に抑制的に働いており、その発現の低下と軟骨形成促進因子であるSox9-Sox5が関係していることが明らかになった。この結果は論文にまとめJournal of Anatomy誌に掲載された。 また、マウス下顎頭軟骨はアルカリフォスファターゼ陽性の原基から形成されることがわかっているが引き続き、胎齢14日以前の原基の構造上の特徴を、新たに購入した3次元解析装置で解析するとともに、器官培養の系で各胎齢における軟骨形成能を検索した。その結果下顎頭軟骨の原基は胎齢13日では下顎骨の原基と区別はつかないが、6日間器官培養を続けると軟骨形成がみられることから、少なくともこの時期には軟骨形成能を有するようになっていることが判明した。この結果は本年の国際歯科研究学会で発表する予定である。さらに下顎頭軟骨原基の凍結切片からmRNAを抽出する実験を遂行中である。
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