研究概要 |
申請者はA群レンサ球菌を用いた感染系を用いて世界に先駆けてオートファジーによる病原菌排除メカニズムを明らかとしてきた.本研究で得られる結果は上皮細胞の持つ新たな自然免疫メカニズムを明らかとするだけでなく,オートファジーの誘導因子を同定することにより新たな口腔内感染症の治療法に結びつくものであると考えられる.そとで,申請者は,口腔内に存在する歯周病原性細菌の細胞内侵入性について解析を行った.主たる歯周病原性細菌P.gingivalisは宿主の上皮細胞や血管内皮細胞内に高頻度で侵入することが知られているが,侵入後の動態については明らかとされていない.そこで,今期はP.gingivalisの細胞内侵入性とP.gingivalisの産生するvesicleの細胞内での動態について解析を行った.その結果,P.gingivalisは線毛を介して細胞外器質のレセプターであるインテグリンα5β1に結合するが,その際にインテグリンのリガンドであるフィブロネクチンを介した結合のみだけではなく,インテグリン鎖に直接結合することを明らかとした.さらに,この線毛は,遺伝子多型により主に6種類に分類されるが,そのうちII型線毛を持つ菌から産生されるvesicleは,他型に比較すると高頻度で細胞内に侵入して,細胞に対して為害作用を発揮することが明らかとなった.さらに,このvesicleの細胞内への侵入過程を詳細に検討すると,細胞内表面のインテグリンに結合したのちに,lipid raftを介して細胞内に侵入して,初期エンドソーム内に取り込まれることが明らかとなった.このうち,一部はリソソーム系により分解されるが,オートファジー系への関与は認められなかった.
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