研究概要 |
延髄後角表層に存在する侵害受容ニューロンのなかで、サブスタンスP(SP)受容体(NK-1;ニューロキニン-1受容体)を持つニューロンが口腔・顔面の疼痛感覚発現に重要であることはわかっていたが、その詳細については不明であった。SPに神経毒であるサポリンを結合させたSP-サポリンを小脳延髄槽に注入し(5nM,5μl)、2週間〜4週間後に延髄後角の第I層と第III層のNK-1受容体を持つニューロンを削除できることを免疫組織化学法にて明らかにした。SP-サポリン投与ラットでは三叉神経節を10分間、電気高強度刺激(1.0mA,5ms,5Hz)後2時間目の延髄後角でのc-Fos発現を抑制した。刺激10分前にγアミノ酪酸(GABA)A(GABA_A)受容体のアンタゴニストであるビククリンを全身投与し、同様に電気刺激するとc-Fos発現を抑制するが、SP-サポリン投与ラットでは逆にc-Fos発現を増加させた。同様の電気低強度刺激(0.1mA,5ms,5Hz)誘導c-Fos発現は、SP-サポリン投与ラットでは変化せず、対照動物ではビククリンの前投与がc-Fos発現を増加させるところSP-サポリン投与ラットでも増加させた。延髄後角の第I層と第III層のNK-1受容体を持つニューロンは感覚刺激の強さに応じたGABA_A受容体を介したニューロンの興奮の制御に重要な役割を演じることを明らかとなった。中枢神経内での疼痛受容ニューロンに対する修飾が刺激の強さによって変化することは明らかであるが、その詳細については不明である。下行性抑制と促通に関するニューロンが大縫線核(Rmg)から三叉神経核へ投射することが明らかにした。Rmgを破壊すると、疼痛感覚が減少することを明らかにし、下行性促通系が抑制系より優勢である事を明らかにした。さらに延髄後角表層のニューロンの活動はセロトニンにより抑制されることをパッチクランプ法にて明らかにした。
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