神経堤細胞に特異的にCre-recombinase遺伝子を発現させることの出来るprotein0(p0)マウスとcre-recombinaseの存在下で特異的にLacZを発現することのできるRosa26Rマウスを用いて、マウスの歯胚に神経堤由来細胞が存在するかどうかを検討した。その結果、マウスの歯胚の間葉細胞の大部分が神経堤に由来する細胞であり、大部分がPDGFRαを発現していることが分った。 我々は、歯胚の間葉に存在する細胞の分化能を調べたところ、II型コラーゲン抗体陽性の軟骨細胞、アルカリフォスファターゼ及びアリザリンレッド陽性の石灰化を伴う骨芽細胞、デンチンシアロプロテインを発現する象牙芽細胞への分化能を持つことがわかった。さらに、これらの細胞が、神経堤に由来することを、LacZ染色と抗体あるいはアルカリフォスファターゼ、アリザリンレッドの2重染色を用いて明らかにした。 さらに、これらの実験系において、LacZ陰性の細胞からも、軟骨細胞あるいは骨芽細胞が誘導されることを明らかにした。これらの結果より、歯胚に存在する軟骨細胞、骨芽細胞に分化できる多分化能を持つ細胞は、神経堤あるいは中胚葉の両者に由来する可能性が示唆された。 また、我々は、これらの骨芽細胞や軟骨細胞や象牙芽細胞に分化できる細胞が、歯胚のみならず歯髄にも存在する可能性を示した。 現在、これらの骨芽細胞、軟骨細胞、象牙芽細胞に分化できる細胞が、多分化能を持つ細胞であるか、それぞれの分化能を持つ細胞の集団であるか、クローン培養法にて検討中である。 最近、骨髄に存在する間葉系幹細胞を様々な細胞のソースあるいは再生医療の材料として研究が進んでいるが、我々の明らかにした系を用いることで、歯あるいは歯胚を用いた再生医療の実現の可能性が示唆される。
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