平成18年度は以下の3つの実験計画を立て、次のような結果を得た。 1)歯髄及び発生途中の歯間葉に存在する神経堤由来の細胞のクローン解析 2)中胚葉に由来する細胞を特異的に標識できるマウスを用いた歯の間葉細胞の由来解析 3)歯の間葉細胞の細胞表面マーカー解析 [実験結果] 1)我々は、歯胚に骨や軟骨や象牙芽細胞への分化能を有する神経堤由来細胞が存在することを明らかにしたが、これらが多分化能を持つ細胞に由来するか、単分化能を持つ細胞の集団であるかは明らかではないので、歯胚の幹細胞を単離し分化能を検討するために、クローン株作成を試みた。しかし、残念ながらいまだにクローン化はできていない。従って、現段階では歯に多分化能を持つ神経堤に由来する間葉系幹細胞が存在するかは証明できていない。 2)これまで歯胚の間葉には神経堤細胞由来で骨、軟骨や象牙芽細胞への分化能を持つ細胞が存在することを明らかにした。同時に神経堤に由来しない細胞も骨や軟骨に分化できる可能性が示唆されたので、まず歯胚に中胚葉に由来する問葉系細胞が寄与しているかを検討した。今回中胚葉に由来する細胞の一部を特異的に検出できるマウスを用いて、歯胚及び歯髄には中胚葉に由来する細胞も寄与することを明らかにした。 3)歯胚に存在する間葉系細胞の表面解析を行い、神経堤に由来する細胞は主に間葉系マーカーであるPDGFRaを発現していることを明らかにした。一方、中胚葉に由来する細胞はPDGFRaを発現している間葉系細胞とCD45を発現する血液系細胞に分かれることがわかった。現在、中胚葉系細胞と神経堤由来細胞との細胞表面分子の違いについて検討中であるが、未だに両者を分離できる表面分子は見つかっていない。
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