研究課題
内軟骨性骨化因子として同定されたCTGFの培地への添加によって、軟骨細胞株HCS-2/8の増殖、軟骨芽細胞分化の相反的促進をはじめ、細胞接着向上等、この増殖因子の有用性が多数指摘されてきた。そこで、我々はこの背景をもとにCTGFの骨折回復促進への応用を検討する目的で、in vivoでのCTGFの役割の分析を開始し、正常マウスの骨形成の際、増殖軟骨細胞が肥大軟骨細胞へ分化する過程で肥大軟骨細胞が発現することを報告した。今回、米国のLyones教授からctgfヘテロの個体を供与され、ctgfのノックアウトマウスを作成し、その骨形成を観察した。遺伝子型は12日胚を境に、それ以前は卵黄嚢、それ以後は尾を消化してPCRにより判定した。その結果、CTGF遺伝子発現に見られた2相性、即ち遺伝子発現の最初のピークが7〜9日胚を中心に起こり、以後減衰して13日胚頃から再び上昇する2相性パターンに関連する形態的変化は見られなかった。血管形成も野生型と有意差が見られなかったし、発生中期の肝臓における巨核球、単核球系の細胞の密度にも有意差が無く、骨形成でさえ殆ど正常に近く、Cbfa1をノックアウトしたマウスに見られたような劇的な遅延や骨髄の非形成は見られなかった。しかし、ctgfのノックアウトマウスでは大腿骨等の長骨は野生型とはやや異なり、石灰化以降の骨形成は遅延し、軽度の弯曲が見られた。口蓋は吻側から尾側まで完全に分離した重度の口蓋裂を生じた。結局、出生からわずかの後死亡した。歯胚、腎、心臓は有意差が見られなかった。ctgfのノックアウトマウスの後期胚で骨形成部位を詳細に検討した結果、肥大軟骨細胞層の厚さが野生型よりかなり厚いこと、破骨細胞の肥大軟骨層への集中が見られなかったことが、長管骨の形成に影響したと推測された。即ち、肥大軟骨細胞にCTGFが発現するとアポトーシスが起こり、そこへ向かって破骨細胞が集中するというメカニズムが働いている可能性が示唆された。
すべて 2005
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