研究概要 |
エナメル芽細胞はエナメル質形成に際しCaの輸送,エナメルタンパクの分泌ならびに脱却を行うが,これらの物質輸送には細胞間隙のシーリング構造であるタイトジャンクション(TJ)が重要と考えられている。TJ構成タンパクの一つであるクローディン(CLD)種のうち,ある種のCLDは特定の物質の細胞間輸送に関連することが示されている。前年度の検索結果を総括すると,エナメル芽細胞に発現するCLDのタイプが示されたと共に,形成期と成熟期でCLD発現の相違が明らかとなった。さらに特筆すべき現象として,近遠心両端に陽性を呈する領域がみられた。極性を有する上皮細胞の近・遠心両端にCLDsが発現するという報告はない。そこで本年度は,免疫組織学的に認められた成熟期エナメル芽細胞の近・遠心両端に局在するCLDsの発現と形態学的にTJの局在を調べることに主眼をおいた。その結果,近・遠心両端のCLDs発現はruffle-endedならびにsmooth-endedエナメル芽細胞領域との関連性が認められず,且つ発現領域に規則性がみられなかった。他方,微細構造学的には近・遠心両端にTJを有するエナメル芽細胞はみられなかった。また,星状網の細胞とエナメル芽細胞間にもTJの存在はみられなかった。以上の結果から,1)近・遠心両端にCLDs陽性を示すエナメル芽細胞は近・遠心両端いずれかのCLDsはタンパク発現のみでTJを形成しない,2)TJは形成するが,いわゆるfascia occludensであるため超薄切片では観察が困難であること等が推測された。本年度においては観察結果の相違につて解明することが出来なかったが,これらはエナメル芽細胞特有の現象である可能性が示唆された。今後,各ステージにおいて同定されたCLD種の発現パターンと物質輸送に際する機能的意義について,CLDのKOマウスを用いる等さらに検索を進める。
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