研究概要 |
A.actinomycetemcomitans産生するCytolethal DistendingToxin(CDdt)についての研究CdtはCdtA,CdtB,CdtCの3つのサブユニットからなる蛋白毒素である。A.actinomycetemcomitansのCdtAはアミノ末端側に通称lipoboxと呼ばれる、脂質修飾されるコンセンサスドメインを持っている。我々は大腸菌発現系を用いて、CdtAの16番目のシステインが放射性ラベルされたパルミチン酸、グリセロールで標識されることを示した。また転写後のシグナル配列のプロセシングがリポ蛋白特異的シグナルペプチダーゼ2の特異的阻害剤、グルボマイシンによって阻害されることを示した。また培養上澄み、ペリプラスム画分のCdtを抗体による免疫沈降あるいはHis-tagによる沈降を用いて調べることによりCdtAがペリプラズム中でさらにプロセシングを受け、CdtA'になることを明らかにした。またCdtAの脂質修飾が、最終的にCdt複合体の菌体外への分泌に重要であることを明らかにした。 歯周病原菌の抗菌ペプチドに対する感受性についての研究 上皮細胞が産生する抗菌ペプチドは自然免疫において重要な役割を果たしていると考えられている。合成したヒトβディフェンシン1(hBD1),hBD2,hBD3,LL37を用いて主な口腔細菌のこれら抗菌ペプチドに対する感受性について調べた。その結果、菌種、菌株によって感受性が異なることが明らかとなった。なかでもFusobacterium nucleatumはhBD3およびLL37に強い感受性を示した。私どもはA.actinomycetemcomitansを用いて菌のゼータ電位(菌のネットチャージ)と抗菌ペプチドに対する感受性について比較検討した結果、ある程度の相関を認めたものの全ての菌株において相関が認められるわけではないことが明らかとなった。これらの結果からβディフェンシンおよびLL37は口腔細菌に対して様々な抗菌活性を発揮することが明らかになった。
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