本研究は、咀嚼システムの発達・老化.に関し、形態学的研究を基盤にして申請テーマに従い進められてきた。これらの研究を展開してきた背景には、先進諸国といわれる我が国における高齢化・超高齢化社会の到来という深刻な社会現象に対する認識が存在していることは言うまでもない。 今年度は、咀嚼運動制御中枢の発達・老化、および恒常性維持に影響を与える因子と顎運動制御中枢におけるニューロン数の加齢による動態を解析することにより、顎運動制御機構を再生するための基礎的問題点を明らかにするために、以下に示す手順で基礎的な研究を行い、初期の目的を達成した。 (1)正常なICRマウスを用いて、脳におけるニューロンの新生が見られる部位と見られない部位を特定するために、まず、BrdUの取り込み細胞の存在を確認した。引き続きBrdUを取り込んだ細胞がどのような細胞の前駆体であるかについて、ニューロンの前駆細胞のマーカーであるDCXと細胞新生の指標となるBrdUの二重免疫組織化学等の方法を用いて解析した。その結果、咀嚼に関連した部位を含む中枢の様々な部位での細胞新生とニューロンの前駆細胞の存在を確かめた。 (2)上記の実験結果に基づき、ニューロンの新生が起きる程度の経日的変化を出生後から老齢マウスに至るまで(1)と同様の方法で解析した。その結果、若齢マウスはもちろん、数は減少するものの老齢マウスにおいても、従来の所見とは異なり、海馬、嗅球以外の部位でもニューロンの薪生が確認された。 成果については現在とりまとめ中である。
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