研究概要 |
PKRはインターフェロンや2本鎖RNAによって活性化され,細胞の増殖や分化,アポトーシス,抗腫瘍作用等の広範囲な生命現象に関与する。我々は,触媒ドメインを変異したPKR(K296R)のcDNAをマウス及びヒト骨芽細胞に導入し,定常に発現している変異細胞株を樹立した。我々は,オカダ酸はこの変異細胞でIκBαのリン酸化を促進し,このリン酸化部位はチロシン残基であることを報告した(Morimoto et al.,2005)。また,骨芽細胞の石灰化にPKRが必須であり,その石灰化調節経路に転写因子STAT1やRunx2が関与することを発見し,報告した(Yoshida et al.,2005)。蛋白質脱リン酸化酵素1δ型(PP1δ)は核小体に3-7個のドット様構造物として認められる37kDaの蛋白質である。この細胞内分布はニュークレオリンとニュークレオフォスミンの細胞内局在と一致している。我々はオカダ酸により誘導される骨芽細胞のアポトーシスにおけるニュークレオリンと核小体蛋白質の動向に注目した。正常細胞では,核小体にPP1δの局在と類似するニュークレオリンが検出されるが,アポトーシス細胞では,この構造物は分解されて検出されなかった。この物質を同定するために,我々はオカダ酸処理アポトーシス細胞から蛋白を調製し,SDS-PAGEを行い分離した蛋白を抗ニュークレオリン抗体を用いてウエスタンブロットを行った。アポトーシス細胞では分子量110kDaの蛋白の発現量が減少し,逆に分子量80kDaの蛋白が新たに出現し,その発現量は増加した。このことは,アポトーシスによりニュークレオリンは分解されて80kDaの蛋白に断片化されることを意味している(Haneji,2005;Kato et al.,2005)
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