研究概要 |
マウス骨髄細胞より分化誘導した破骨細胞様細胞(osteoclast-like cells, OLCs)におけるエンドソーム(endosome, ES)の動態を蛍光二重染色法にて解析した。 OLCsでは、cathepsinK(CathK)またはcystatinC(CysC)に陽性を示す大小のESが観察され、同一のESにてそれらの局在が一致していた。Dihydrochlorideはdinitrophenyl(DNP)はエンドソーム内の酸性環境形成の指標となりうる試薬である。DNP陽性ESとCathK陽性またはCysC陽性ESとは共存していた。後期ES膜タンパク1ysosomal associatemembraneprotein2(LAMP2)陽性ESはCathK陽性/CysC陽性ESと共存していたが、初期ES膜タンパクearlyendosomeassociateprotein 1(EEA1)陽性ESとは認められなかった。DNP陽性ESはLAMP2陽性ESと共存していたが、EEA1陽性ESとは共存していなかった。Phosphatydilinositol 3 kinase(PI3-kinase)阻害剤wortomannin(WT)は、CathK陽性/CysC陽性ESならびに、CathK陽性/cysc陽性EsとLAMP2陽性/DNP陽性Esとの共存関係を解消した。電顕での観察により、WT処理OLCsではESの貯留ならびに大型化が認められ、刷子縁が消失していた。したがって、破骨細胞内で合成されたCathK/CysCは、酸性後期ESに輸送され、骨面へのエキソサイトーシスが示された。 HRP添加後30分ではHRP陽性エンドソームとLAMP2陽性/DNP陽性ESとは局在が一致していなかったが、60分後ではそれらは同一ESとして観察された。いずれの作用時間でもHRP陽性ESとEEA1陽性ESの共存関係は認められなかった。WT処理OLCsでは、HRP陽性ESとLAMP2陽性/DNP陽性ESとの共存関係が解消されていた。その他の局在関係はWT未処理群と同じであった。したがって、破骨細胞内にトランスサイトーシスにより取り込まれたHRPは、酸性環境である後期ESに輸送される事が示された。 以上の結果から、破骨細胞におけるエキソサイトーシス/トランスサイトーシスの過程における後期ESへの膜輸送は、PI3-kinaseによる調節が示唆された。したがって、PI3-kinaseをターゲットする薬剤の開発は、骨粗髪症などの代謝性骨疾患の治療薬として有用なことが示唆された。
|