研究概要 |
【目的】正常細胞が癌化する最初のポイントは細胞内のゲノムDNAに損傷や異常がおこるためと考えられる。そこで、口腔粘膜由来培養細胞株を用いて化学的DNA損傷を与えた後、p53、リン酸化p53(p-p53)の発現変化、DNA損傷チェックポイント制御遺伝子タンパクの発現を調べた。 【方法】口腔粘膜由来培養癌細胞5種類(HSC2、HSC3、HSC4、SAS、Ca922)から、ウエスタンブロット法を用いて非変異p53発現細胞株を検索した。培養細胞の化学的DNA損傷実験にはアクチノマイシンDを用い、各細胞における適用濃度と、濃度依存性にp-p53の発現変化がみられる細胞株を調べた。さらにp-p53と上流域のシグナルトランスデューサーであるChk1,Chk2の発現やリン酸化Chk1(p-Chk1)、リン酸化Chk2(p-Chk2)の発現を調べた。 【結果】口腔粘膜由来培養癌細胞5種類中、非変異p53の発現はHSC3、HSC4、Ca922にみられた。アクチノマイシンD濃度依存性によるp-p53の発現はHSC4で顕著にみられたことから、HSC4を用いてアクチノマイシンD処理後のp-Chk1、p-Chk2のタンパク発現を検索した。p-Chk1の発現はリン酸化部位の相違(Ser317、Ser345)にかかわらず発現は見られなかった。p-ChkZの発現はリン酸化部位(Ser19、Ser33/35、Thr68、Thr387、Thr432)の違う5種類の抗体を用いて検索した結果、Ser19部位でのリン酸化が確認された。今後、HSC4培養細胞株を用いて上流域のセンサーであるATM/ATRのリン酸化、化学的DNA損傷とあわせて放射線照射後のDNA損傷制御遺伝子異常、各DNA損傷チェックポイント制御遺伝子の相互作用を調べ、さらに正常口腔粘膜由来培養細胞を用いてDNA損傷制御遺伝子の発現解析を行なう予定である。
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