研究概要 |
歯のエナメル質と象牙質のレーザーによるablation効果は歯科医療でよく用いられているEr:YAGレーザーの場合充分なエネルギーのレーザー光によってピットあるいはホールが形成されるが、一方で熱による変質を受けることが知られている。同じ波長のFEL自由電子レーザー(日本大学電子線利用研究施設LEBRAのLINACを利用したアンジュレーター型自由電子レーザーFEL発生装置)を用いた場合には,熱の痕跡はほとんど生じていない.また、LEBRA-FELは1.0μから6.0μの波長のレーザーを任意の設定で発生・照射が可能であるため、歯の硬組織のレーザーablation効果の波長依存性を測定した。 1.レーザーの歯に対する熱的ablation効果 すでに多くの報告の通りEr:YAGレーザーはエナメル質を切削できるが、周囲に熱履歴を残すことが今回の実験でも微小部X線回折法、顕微FTIR法、顕微FT-Raman法で確認できた(発表準備中)。FELによる熱履歴の観測実験として、照射対象物に熱的な変化に敏感な石膏を用いた結果、FEL照射では熱的な変性をしめす証拠は認められなかった(Sakae et al., 2007)。 2.歯の硬組織のレーザーablation効果の波長依存性 歯のエナメル質と象牙質の切削に最適なレーザーを探索する目的と、レーザーablation効果の基本的な気候を理解する目的で、波長可変の自由電子レーザーで実験を行った。自由電子レーザーの波長可変特性を利用して、歯のエナメル質・象牙質のピット形成における波長依存性を調べた。その結果、0.1μmオーダーではあるがエナメル質と象牙質のピット形成最適波長にはズレがあることが知られた。このことは、従来言われている歯のレーザーablation効果が3.0μmの水の吸収バンドに起因しているという単純な機構では説明できないことを示した。
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