口腔レンサ球菌の一種であるStreptococcus gordoniiは口腔バイオフィルムの形成や歯肉炎発症に関与すると共に、感染性心内膜炎の主要な原因菌である。本菌のシアル酸結合性アドヘジン(Hsa蛋白)は、N-アセチルグルコサミンを含む糖蛋白であることが申請者らによって明らかになっている。さらにHsa蛋白の糖修飾部位は、この蛋白の75%以上を占めているセリンリッチ領域であること、糖結合様式はO-グリコシド結合であること、Hsa蛋白は感染性心内膜炎の病原因子であることなどを明らかにしてきた。さらに、18年度はHsa蛋白の糖修飾に関連する遺伝子を同定するために、トランスポゾンを用いてS.gordoniiのDL1株の変異株ライブラリーを作製し、N-アセチルグルコサミンに特異的に結合するコムギ胚レクチンの結合活性の有無によるライブラリーのスクリーニングを行い、それに関連している遺伝子の同定を試みた。その結果、GlmM(phosphoglucosamine mutase)をコードしている遺伝子をクローン化した。GlmMの生理的な役割については完全に解明されておらず、大腸菌や枯草菌などではペプチドグリカン合成に関係していることが報告されている。しかしながら、レンサ球菌においてはその存在が知られておらず、従って当然のことながらその生理的な役割も不明である。今回、申請者らはGlmMがペプチドグルカン合成に関係している可能性について検証し、さらにバイオフィルム形成にも重要な役割を果たしていることを明らかにした。今後さらにGlnMがHsaの糖鎖修飾に関与する可能性について検討する。
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