研究課題
基盤研究(C)
口腔レンサ球菌のStreptococcus gordoniiは口腔内のバイオフィルムである歯垢の形成に関与するが、感染性心内膜炎の主要な原因菌でもある。本菌のシアル酸結合性アドヘジン(Hsa蛋白)はN-アセチルグルコサミンを含む糖蛋白であるが、その糖の修飾部位がHsaのセリンリッチ繰り返し領域であることや糖結合様式がグリコシド結合であることなどを明らかにした。またラットを用いた心臓カテーテル挿入法による感染性心内膜炎の実験系を用いて、Hsaが感染性心内膜炎の病原因子であることを示した。感染性心内膜炎の発症機序には血小板や赤血球の凝集反応が関与している可能性が考えられているが、既に我々は、血小板のHsaに対する受容体を同定して、それが2種類の膜内在性のシアロ糖蛋白であることを示した。今回は、赤血球の受容体が、その細胞膜に存在しているシアロ糖蛋白であるグリコフォリンAとバンド3であることを明らかにした。次にHsa蛋白の糖修飾に関連する遺伝子を同定するためにトランスポゾンを用いた変異株のライブラリーのスクリーニングを行い、GlmM(phosphoglucosamine mutase、他の細菌ではペプチドグリカン合成に関与していることが報告されている)をコードしている遺伝子を同定した。glmM変異株では、野性株と比較して細菌の増殖能、バイオフィルム形成能が低下し、細胞壁合成阻害能のある抗菌薬に対する感受性が増加することを示した。また形態学的解析により、glmM変異株の連鎖が顕著に伸長していることを見いだした。さらに電子顕微鏡を用いた観察により、glmM変異株ではペプチドグリカン生合成の異常が原因とおもわれる形態の変化が認められた。従って本菌のGlmMは、バイオフィルム形成や、薬物感受性に深く関与することを明らかにしたが、Hsaの糖修飾への関与についてはさらなる検討が必要と考えられる。
すべて 2008 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件)
Microbiol.Immunol 52
ページ: 69-77
FEMS Immunol.Med.Microbiol (印刷中)
Microbiol. Immunol 52
FEMS Immunol. Med. Microbiol (in press)
Infect.Immun 74
ページ: 740-743
Infect. Immun 74