本年度は細胞移植時に安全で安定かつ目的の臓器に目的の組織、さらには患者に十分に供給できるだけの細胞量の確保する系の確立することを目的として研究を行った。幹細胞が多く含まれていると考えられている臍帯血由来の間葉系細胞の分子レベルでの特徴及び増殖曲線などの解析結果に基づき、HPVの部分遺伝子およびhTERT(human telomerase reverse transcriptase)をレトロウイルスの細胞への感染により遺伝子導入を行い、細胞寿命の延長に成功しました。さらに分化後の移植された細胞が生体内でうまく機能するかどうかの有効性、腫瘍化しないかどうかの安全性について検討を行ってきた。機能については今後も引き続き検討していくが、腫瘍化は今のところ確認していない。臨床応用、細胞治療に十分な量の安全で品質の均質な細胞提供に向けてRNA干渉法、PTD(protein transduction domain)タンパクにより細胞周期の停止させる遺伝子をノックダウンして細胞の寿命延長にも取り組みました。RNA干渉法については細胞寿命を制御している新しい遺伝子領域についても今後検討していく。PTDタンパクについては細胞種、導入遺伝子によって多くの条件検討が必要であり、今後も検討が必要である。さらにヒト臨床検体、具体的には内分泌細胞の増殖能と機能を維持したまま細胞の寿命の制御することにも取り組んでおり、HPVの部分遺伝子を用いた細胞の寿命制御に関する研究は多くの疾患へのアプローチとしての細胞治療を一般的なものとするべく大きなステップとなると確信しております。
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