研究課題
昨年度から引き続きヒト骨髄間葉系幹細胞の寿命を腫瘍化させずに延長できる系としてHPVの実験系を臍帯血・月経血・末梢血由来の間葉系幹細胞について応用してきた。細胞株の樹立に成功した臍帯血・月経血・末梢血由来の間葉系幹細胞を使って、確実な分化方法の確立に努めた。臍帯血由来間葉系幹細胞の心筋への分化、肝臓への分化の方法を確立し、論文発表した。月経血由来間葉系幹細胞の骨格筋への分化に関しても論文発表した。さらに樹立された初期培養細胞株ならびに寿命延長に成功した細胞株に関するバイオロジーを造腫瘍性実験、マイクロアレイで検討を進めてきた。ヒト臍帯血の間葉系幹細胞にテロメレースを活性化するhTERTを細胞内に遺伝子導入し、寿命を延長することに成功した臍帯血の間葉系幹細胞は骨、脂肪、心臓、肝臓、神経へ分化する能力が寿命延長された後も維持されており、細胞表面マーカーの違いも認めなかった。さらにヌードマウスへの移植による腫瘍形成能も認められなかった。さらにこの細胞は継代を重ねた後においても染色体異常をほとんど認めなかった。臍帯血由来間葉系幹細胞の細胞移植医療で問題となる細胞数については、現在のところ遺伝子導入により解決することができるが、分化する能力を維持させることは可能である。しかし、導入する遺伝子の種類によっては染色体異常があることが明らかにされた。ウイルスを用いた遺伝子導入に変わる手段としてRNA干渉法、PTDタンパクによる細胞延命増殖の方法の確立、細胞培養時に用いる培養液の検討も進めてきた。このようにして得られたヒト臍帯血の間葉系幹細胞は細胞移植治療のための細胞ソースのみならず、ハイブリッド型人工臓器の開発やハイスループット系の薬物スクリーニングなどの研究開発にも応用可能である。臍帯血に含まれる間葉系幹細胞は再生医療への応用に大きく貢献できる貴重な細胞ソースである。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (4件)
In Vitro Cellular&Developmental Biology-Animal 43巻3-4号
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